1000の風1000のチェロ

絵本コーディネーター・色育シニアインストラクターの
カッキーhttp://ameblo.jp/alyssaerikaです。

今回は、2000年の11月に発行された、

少し大きなお子さんから大人の方への絵本のご紹介です。

『1000の風1000のチェロ』
作・絵: いせひでこ
出版社: 偕成社

チェロのきょうしつに きょう あたらしいせいとがはいってきた

主人公の男の子は、飼っていた愛犬グレイを亡くして毎日泣いていた彼に

お父さんはチェロを買ってきました。

通っていたチェロ教室に、新しい生徒が入ってきたのです。

新しく入ってきた女の子は、

男の子より難しい曲をすごい迫力でペラペラひきますが、

怒っているような弾き方をしていました。

その子もまた、愛鳥のフロルを阪神大震災でなくしたというのです。

とても優しい、淡いタッチの素敵な水彩画の絵本です。

文章も絵と同様 多くを語らず、ですが、とても言葉を選んで書かれているように思います。

新しく入ってきた女の子は、チェロをペラペラ弾くというのです。

スラスラでなく、それでいてそのあとの文章

怒っているような弾き方 で、あ、そうかペラペラなんだ!と、思わせてくれるわけです。

全般に読みやすく、それでいて心のこもったことばが連なっている絵本です。

この絵本は、
1995年1月17日 阪神・淡路大震災復興支援のチェロコンサートを描いた絵本です。

2000年11月に発行されました。

2011年3月11日 東日本大震災 の記憶も重ねあわせて、

改めて読んでいただきたい絵本です。

震災の様子は、描いてありませんが、

人々の記憶の中にあるものを、男の子と女の子が参加するチェロのコンサートを通して描いているように思います。

作者のいせひでこ さんは、自らチェロを弾かれるそうです。

震災の2か月後に被災地に行かれましたが、

スケッチをせず白紙のまま帰られたそうです。

描かれることを拒否しているようで、

描くことで忘れてはいけない

そのように感じられたそうで、絵本のあとづけに書かれています。

大震災から3年後 神戸から阪神淡路大震災復興支援チャリティーの

「1000人のチェロ・コンサート」への参加の呼びかけの手紙が実際に届いたそうです。

「こころはひとつにできる きもちはかさねあえる」

この絵本にずっと語られている言葉です。

絵とおはなし ゆっくりと何回も感じてほしいそんな絵本です。

チェロなどの音楽を聴きながら、も、よいかと思います。

余談ですが、いせひでこ さんの旦那さんは、ノンフィクション作家の柳田邦男さんなんですよ。

次回も素敵な絵本をご紹介したいと思います。

毎月1日・15日に更新しています。

by カッキー